コラム

更年期と仕事の両立
つらさを我慢しないための対処法と職場づくりを女性産業医が解説

公開日: 2026年7月21日 | 執筆: 産業医 武藤信子

「疲れが取れない」「急に汗が吹き出す」「イライラして集中できない」「何だか気分が沈む」——40代後半から50代の女性がこうした不調を感じたとき、その背景に更年期が関わっていることがあります。

ちょうどこの年代は、仕事では責任あるポジションを任され、家庭でも親の介護や子どもの進路と重なる時期。つらさを我慢しつづけた結果、休職や退職に至ってしまう方も少なくありません。この記事では、ご本人向けの対処法と、職場ができることの両方をお伝えします。

まず結論

この記事のポイント

更年期に何が起きているのか

更年期とは、閉経をはさんだ前後の期間(多くは45〜55歳ごろ)を指します。この時期、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく揺らぎながら減っていくため、体と心にさまざまな変化が起こります。

よく知られるのは、ほてり・のぼせ・発汗(ホットフラッシュ)ですが、実際には疲労感、不眠、動悸、頭痛、関節の痛み、イライラ、不安感、気分の落ち込み、集中力や記憶力の低下など、症状は実に多彩です。「体の不調」と「心の不調」が同時に来るのが特徴で、本人も「自分がどうしてしまったのか分からない」と戸惑うことが多いのです。

大切なのは、症状の重さには大きな個人差があるということ。ほとんど気にならない人もいれば、日常生活に支障が出るほどつらい人もいます。「あの人は平気だったのに」という比較は意味がありません。

ご本人へ:我慢しないでほしい3つのこと

① つらいなら婦人科へ。「治療できる」ことを知ってほしい

更年期の症状は「年齢のせいだから仕方ない」と我慢するものではありません。ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、症状に応じた治療など、選択肢は複数あります。どれが合うかは体質や既往歴によって違うので、婦人科(更年期外来)で相談してください。「これくらいで受診していいのかな」と迷うレベルで、十分受診に値します。

② 「全部更年期のせい」と思い込まない

一方で、注意してほしいこともあります。疲労感や動悸の背景に、甲状腺の病気や貧血、うつ病などが隠れていることがあるのです。「更年期だから」と自己判断して受診が遅れるのが、医師として一番心配なパターンです。健康診断をきちんと受け、気になる症状は医師に伝えて、他の病気の可能性も確認してもらいましょう。

③ 働き方に小さな工夫を

症状を記録する(いつ・どんな場面でつらいか)、大事な仕事は体調の良い時間帯に寄せる、ホットフラッシュに備えて重ね着や小型扇風機を用意する、睡眠を最優先で確保する——小さな工夫の積み重ねで、しのぎやすさはかなり変わります。職場に産業医がいるなら、面談で相談するのも一つの方法です。

職場・人事の方へ:更年期は「会社の課題」です

40代後半〜50代の女性は、経験と人脈を備えた、会社にとってかけがえのない人材です。その方々が更年期の不調を誰にも相談できず、評価の低下を恐れて隠し、最終的に退職してしまう——いわゆる「更年期離職」は、本人にとっても会社にとっても大きな損失です。

会社ができること

職場づくりのヒント

特に管理職の方へ。部下の不調に気づいたとき、原因を詮索する必要はありません。「最近つらそうだけど、無理していない?必要なら仕事の調整もできるよ」と声をかけ、あとは専門家(産業医や医療機関)につなぐ。それだけで十分です。

なお、女性従業員が産業医への相談をためらう理由として「男性の先生には話しにくい」という声は根強くあります。女性の多い職場では、女性産業医や女性保健師という選択肢もご検討ください。

まとめ

更年期は、誰にでも訪れる自然な変化です。ただし、つらさを我慢する必要はまったくありません。ご本人は「治療できる」ことを知って婦人科へ。職場は「相談できる場」と「柔軟な働き方」を。その両輪がそろえば、更年期はキャリアの終わりではなく、働き方を見直して長く活躍するための転機になります。

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この記事の執筆者: 武藤 信子(産業医)
日本医師会認定産業医。外科学会専門医・乳癌学会専門医・がん治療認定医・抗加齢学会専門医。外科医としてがん治療に携わった経験をもとに、健診フォロー・がん検診の受診勧奨・治療と仕事の両立支援に力を入れている。プロフィールの詳細はこちら